2017年5月11日(木)19:00から、御茶ノ水デジタルハリウッド大学にて、押井守監督と若林恵『WIRED』日本版編集長をスペシャルゲストにお招きして、第1回ホロス2050未来会議「第1章 ホロス2050とは?/BECOMING〜世界はもはや「1984」の世界に突入している!〜」を開催、大盛況のうちに終了しました。予想どおり、押井守さんのお話が大変素晴らしく、しかも、「もう一言、もう一言」と繰り返すラスト・トークが、まるでクラシック・コンサートのアンコールのごとき珠玉の内容で、押井ファンにとっては極上のひとときだったと言えるでしょう。
冒頭、服部桂さんから「ホロス2050」とは何か、どういう経緯で開催するに至ったかという説明があった後、押井さんが登壇。押井さんは、まず「未来を考える」というテーマだったら自分にふさわしくないので断ろうと思ったが、「未来を考えるというのはどういうことなのか考える」というテーマだったら話せるということで、「未来」という言葉には色がついている。何か素晴らしいとか明るいとか、人間という存在も文化文明も時間とともに高度になっていくみたいな。しかし、ひとつ確実に言えることは、高度になるということが、そのままイコール幸せなのかというと、幸せというのは別にあると思うのですよ…。という押井さんならではの「未来観」「幸福観」がどんどん展開されていきました。
次に、若林さんは、自身の人生観をもとに、未来がどんどんよくなっていくという考え方は違うんじゃないか、という話をされ、期せずして「明るい未来を語るヤツは疑ってかかれ!」論が展開されました。
続いて、私、高木が、お二人の話を受けて、「複雑なことを複雑だと言って語るヤツは疑え!」という話から入って、現代のこの複雑な状況は「◯と△」というシンプルな例えで理解してみるといいんじゃないか、という話をしました。◯というのはインターネットのことで、丸い地球をメッシュ上に覆っているインターネットが、人類史上初めて、中心のない、いわゆる水平分散ネットワークというコミュニケーションの仕組みを実現した。一方、このインターネットが誕生するまで、人類はずうっと△。すなわち、ピラミッド型のコミュニケーションの仕組みで文化、文明を築いてきた。「大企業」も「学校教育」も「軍隊」も「マスメディア」も、私たちが「国家」と呼ぶ存在も、すべてピラミッド型であり、考えるのはトップのエリートたちだけで、あとは命令されたとおり手足となって動け、という仕組みでやってきた。要するに大型コンピュータのような仕組みでやってきた。ところが、1984年に世界初のパーソナルコンピュータMacintoshが誕生し、1994年にNetscape Navigatorが登場して以来、この30年間というのは、ピラミッド型社会の中で「専門家」が圧倒的に力を持っていた状況から、パーソナルコンピュータやインターネットを活用して「その他の人々=アマチュア」がどんどんパワーをつけてきた歴史であり、その中で◯と△のパワーが拮抗したのが2016年で、そのひとつの象徴がトランプ大統領の誕生だったのではないか。おそらくこのままいけば、ピラミッドはずうっと縮小し、インターネットが圧倒的に力を持つような社会になっていくと考えられるが、でも、頭のいい専門家たちは黙ってそれを見過ごすようなことはしない。もう一度、自分たちにとってとっても居心地のいいピラミッド型社会に戻そうと強烈な働きかけをしてくる。そして、ぼーっとしていれば、官僚たちによってガチガチに支配コントロールされる「1984」的な未来がやってくるかもしれない、といったお話をしました。続いて、押井さん、若林さん、服部さんに一言ずつ発言してもらったところで、終了時間となりました。
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