2017年7月18日(火)19:30から、御茶ノ水デジタルハリウッド大学において、『BuzzFeed』編集長の古田大輔さんとマンガ家の鈴木みそさんをスペシャルゲストにお迎えして、第3回ホロス2050未来会議「第3章 コンテンツ産業の変容/FLOWING〜ページからストリーミングへの4段階〜」を開催しました。
最初に、発起人の服部桂が『<インターネット>の次に来るもの』の「第3章 FLOWING」の概要を説明。「フローイング」というのは「流れている」という意味で、世界最大のコピーマシンであるインターネットの中で、情報はすべて「流れている」状態となる。「ページ」は特定できなくなり、「タグ」で検索するようになる。品質よりもリアルタイム性が重視されるようになる。そうした中、コンテンツ産業はどうなっていくのか、後ほどパネルでディスカッションしていきたい、と述べました。
続いて、古田大輔さんが登壇。『BuzzFeed』は「分散戦略」という去年のバズワードを世界的に推進してきたメディアであり、フローイングに載っているメディアである。創業者のジョナ・ペレッティの基本命題は「何が物事をバイラルさせるのか、人々はどんなコンテンツをシェアしたいと考えるのか?」ということで、ビューだけでなくシェアを重視し、ひたすら「バズる」コンテンツを目指している。そして、どうやったらオーディエンスにリーチできるかということで、クロスプラットフォーム戦略(分散戦略)を取っている。最も成功した事例がFacebook上の料理動画「TASTy」で、開始1年でフォロワー数400万人、400万いいねがついている。自分たちのサイトに来てもらってバナー広告を見てもらってということではなく、ネイティブアドでその場で収益化を実現していると説明しました。
続いて、鈴木みそさんが登壇。Kindleで自分で『限界集落<ギリギリ>温泉』など8冊を売り出したところ、一年間で1,000万円の収入を得た。2016年8月にスタートした読み放題サービスKindle unlimitedでは、大手出版社がAmazonと喧嘩して逃げてしまったこともあり、1カ月あたり150万円、半年で500万円の収入となった。2017年6月にスタートしたVALUという個人が株を発行できるサービスにさっそく加入。「VALUおっかなびっくりはじめました」という解説マンガを自分のブログにアップしたところ、価値が跳ね上がり、時価総額2億5,000万円くらいになった。リスクは「うさんくさい」ということで、ブームになれば当局が乗り出してきて、すべてが電子の藻屑になるかもしれない。メリットは、クリエーター支援になるということで、作家が面白いことを書くとそれによって株価が上がるという、あやしい世界がやってくるのかもしれない、といった話をしました。
パネルディスカッションでは、①ページは古い?(情報洪水・ヘイト・フェイク・コンテンツ産業衰退) ②流れとタグとは? ③断片情報(提供者中心) → 知識活動(利用者中心) ④出版+放送+IT+…(テクノロジーとリベラルアーツの交差点) ⑤ブラウザ革命(ランダムアクセシブル・フローなUX開発が鍵?)という5つのテーマについて議論した後、ケヴィン・ケリーが「無料のものに払う論理」として挙げている「即時性」「個人化」「解釈」「信頼性」「アクセス可能性」「実体化」「得意客」「発見可能性」について議論しました。いずれ劣らぬトレンド最前線を熟知した示唆に富んだ発言が相次ぎ、白熱した議論が交わされました。その中からいくつかを抜粋すると、以下のとおりです。
古田:十年先はわからないが、五年先であれば、まだページは残っていると思う。なぜなら、フローイングはただ眺めているだけならいいが、検索しようとするとページのほうが優れているから。フローイングの課題は、まだ検索技術が確立されていないところ。
鈴木:クリエーターにとっては、作家性というのが重要なので、タグよりもキャラのほうが大切。
古田:みそさんのプレゼンを見ていて、個人のほうがキャラを立てやすく、今の時代、企業よりも強いと改めて思った。『BuzzFeed』ではライターの人たちに個人でどんどん発信してもらうようにしている。
服部:Googleは写真に続いて動画、音声への自動タグ付けを進めている。今はテレビの番組にメタタグがつけられず検索できないが、将来はテレビも検索しながら見るようになり、本も検索しながら読み、自分の人生まで検索するようになる。
高木:これまでのインターネットは情報の提供者が中心で、断片的な情報に溢れていた。何が足りないかというと「自分のためのインターネット」という利用者中心の考え方ではないか?
鈴木:今、一番興味があるのはVRによる疑似体験。これから先、ゲームをやっているうちに知識を身に付けられたり、優秀な先生たちがまるでマンツーマンで教えてくれるような状況がやってくるかもしれない。
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